ス レ チ ガ イ
すれ違っただけだった
名前も 趣味も 好きな食べ物も
何も知らない ただの1度だって話したことのない他人であり
あなたにとっても それは同じこと
毎朝8時20分前後の この大通りの角を曲がって すぐの一方通行の道向かい
イヤホンしながら ちょっとゆるい速度で歩く
こげ茶色の髪揺らしながら コツコツと靴音鳴らしながら
たいしてまともな恋愛なんてしてきたわけでもなく
これといって過激な恋がしたいと思っていたのでもなく
とはいえこんな怠慢な日々に付ける理由も無いが為に
なおかつ大胆なことのできる勇気や自信も無いんですが
あなたに恋をしたんです
すれ違ったあの瞬間(とき)から
僕の眼球は数日前からどうも様子がおかしくて
毎日同じ景色のはずなのに 素敵なものがたくさん見えるようになって
その中で特別素敵なあなたとすれ違うことが
僕が今 ここにいる理由なんです
ふと目が合うこともあって 僕はもうどうにかなりそうで
道向かいのあなたにはきっとどうでもいいことなのかもしれないけれど
挨拶くらいしようかな 変な人だと思われるのはやだな
思いを巡らせてることに気付いた時、ちょっと苦しくもなりました
あなたと恋がしたいです
もうすれ違うだけじゃ駄目なんです
一日中 あの一瞬のことをずっと考えていて
毎日空っぽだった僕は はち切れそうなほど満ち溢れてしまって
この日々の中にあなたをもう少し分けてください
なんて、もし、あの人が考えていたのなら、私も恋してますと伝えるのに